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interview01 株式会社山下農園 代表取締役 山下 徹 様

企業DATA

神例造船株式会社
(かんれいぞうせんかぶしきがいしゃ)
・本社工場
徳島県鳴門市里浦町里浦字恵美寿676番地
TEL 088-685-0177 FAX 088-685-4324
・徳島工場
徳島市川内町加賀須野77
TEL 088-665-1313 FAX 088-665-0158
HP http://www.narutocci.or.jp/kigyou/kanrei.html

導入している商品

  • ・ハイドロカット(水素)
  • ・産業機械
  • ・溶接材料

『神例造船』は創業150年を超える造船・鉄鋼メーカーです。
鳴門市里浦町の本社工場ではタンカー、LPG船、揚土船、大型クレーン船、底開式土運船といった多種多様な船舶を、徳島市川内町の徳島工場では橋梁や水門などの鋼構造物を手掛け、近年は製造が難しいといわれるケーブル敷設船の建造も行っています。長年培ってきた高い技術力は国内外で高く評価され、その技術を絶やさぬよう、若い世代への伝承にも力を注いでいます。

(ツクレボ 松永)

多種多様な特殊船も手掛ける造船工場

——ナビに頼って車でこちらへ伺ったのですが、撫養川の河口付近に近づくと、突如『神例造船』と書かれた巨大なクレーンが出現して、驚きました。こんなに大きな造船工場が鳴門にあったとは!

和喜さん:鳴門市街地からちょっと離れているので、地元の人でも意外と知らないという方がいらっしゃいますね。夜になればジブクレーンの警戒棟がピカピカ光って見えるので、気付いてもらえるかもしれません(笑)。

以西部長:『神例造船』というと加賀須野大橋付近の徳島工場が本社だと思っている人もいるのではないでしょうか?

和喜さん:そうですね、徳島工場の方が国道11号線に近いので。徳島工場では橋梁などを造っていて、最近では電力会社の建屋なども手掛けています。

——こちらの工場ではどのような船を造っているのですか?

和喜さん:多種多様な船を造っています。最近ではケーブル敷設船なども手掛けました。海洋掘削船としては地球深部探査船「ちきゅう」が有名ですが、船体の中央に櫓のある船で、弊社で造ったものは、それよりも小型でした。沖縄・辺野古の海洋調査や新潟沖のメタンハイドレートの試験掘削の船など、特殊船といわれるものも、ここで造っています。他に珍しいものだと、砂利採取船も手掛けました。昔は川の河口付近で砂を採取していたんですが、今は水深が100mぐらいの遠く離れたところから砂を採ってくるので、かなり大きな設備が必要です。今年7月に完成したものは、日本でも最大級の砂利採取船になりました。

——船といえば、漁船やフェリー、客船くらいしか思い浮かばないのですが、ここでは本当にいろいろな船を造られているんですね。

和喜さん:特殊船の割合が増えたのは2008年のリーマン・ショック以降。それ以前は外国船の製造が中心で、年間5隻は造っていたので、徳島県の輸出金額に貢献していた時代もありました。リーマン・ショック以降は国内船の製造が増え、ケーブル船なども造っています。

現場を支える最先端のガス「ハイドロカット(水素)」

——造船に欠かせない溶断ガス(可燃性ガスと酸素を混合して燃焼させることで、高温の炎を作り出し、金属の切断などに用いるガス)に、ハイドロカットという混合ガスを導入されていると伺いました。

以西部長:これまで溶断ガスにはアセチレンを主としたものを使用されていたのですが、アセチレンの供給量が年々下がっていて、ハイドロカットへの転用をおすすめし、2年前に導入いただいて、設備させていただきました。

——本日、岩谷瓦斯株式会社ガス事業部近畿事務所 営業部長の福田澄生さんも同席いただいております。福田さん、ハイドロカットの特徴について教えていただけますか?

福田さん:はい。アセチレンの利用は公共事業の縮小化などに伴い、1970年代は年間70,000tだったのが、昨年は9,000tまで減少しました。使用量が減るということは、ガスの単価が高くなりますので、使う側にとって価格の高騰は非常に気になるところだと思います。その点、ハイドロカットは価格が安定しているというのが、まずは大きなメリットだと思います。

——なるほど。

福田さん:それから、ハイドロカットは「安全性」・「環境性」・「作業性」にも優れています。通常、ガスを燃焼させ、エネルギーを発するときには必ずCO2を発生しますが、ハイドロカットは水素ベースの溶断用混合ガス。水素と酸素を掛け合わせると水になりますから、地球温暖化の問題になるCO2がほとんど発生しません。水素は今、“究極のクリーンエネルギー”として注目されていて、2020年開催のオリンピック、パラリンピックに向けて東京では水素エネルギーの自動車やバスなどもどんどん採用されています。

——実際に使われてみて、現場の反応はいかがでしょうか?

日下さん:アセチレンと比べるとかなり使いやすくなっています。煤が少なく、輻射熱が少ないところもいいですね。

以西部長:以前、和喜部長からお聞きしたのですが、輻射熱が抑えられることで、今年のような猛暑の夏は、随分助かった、と。ただでさえ暑さは体に堪えますからね。

福田さん:水素はまっすぐに火が入るという特色がありまして、熱を入れたいところには集中的に入りますが、それ以外のところにほとんど熱が広がりません。作業する人が暑くないわけではないのですが、輻射熱はかなり抑えられるので、連続作業にも適しているガスといえると思います。

以西部長:それから逆火も起こりにくく、安全性が高いところもメリットです。

——逆火とは、どういうものでしょうか?

福田さん:煤や煙は火を出す火口の詰まりの原因になります。火口が詰まってしまうと、ガスの流量が抑えられてしまうので、機械の中に入り込んで小さな爆発が起こる場合もあります。これを逆火といいます。 アセチレンは逆火が起りやすいという問題点がありました。ハイドロカットは水素を原料にしているので、煤もほとんど出ないうえ、ガスの流量が早い。仮に何か詰まる要素があったとしても、その早さ故に逆火が起らないので、安全性が高いといわれています。

——時代の流れに則した最先端のガスというわけですね。

和喜さん:一般の人がイメージされるとすれば、白熱灯がLEDになったような感じです。導入当時は職人さん達も少し戸惑ったとは思いますが、最近は慣れて使いこなしていますよ。

職人技術を若い世代へ。ものづくりの楽しさと共に。

和喜さん:『中岸商店』さんには、ハイドロカットだけでなく、切断機、溶接機、ガスホース、エアホースなども含め、造船に関する資材のほぼすべて、お世話になっています。部品などを購入しても売りっぱなしだと、いくら安くても後々困るでしょう?メンテナンスもしっかりしていて、小さな部品でもすぐ対応していただける。そういうところが今までの長い付き合いに繋がっていると思います。

——ハイドロカットに続き、何か新しく導入を検討されているものはありますか?

和喜さん:そうですね・・・。最近ではロボットを多数導入している工場も増えていますが、弊社は多種多様な船を造っていて、毎回毎回作業も異なるので、ロボット化が大きくできないんですよ。同じような船をどんどん造るのであれば、ロボットを多数入れて効率よく、スピーディーに造れるのかもしれませんが、AIもロボットも無縁。職人の経験と技術を頼りに昔ながらの人海戦術でやっています。

以西部長:大変な仕事だと思いますが、こういう業界にもっともっと若い人が入ってきて活躍して欲しいですね。徳島県立徳島科学技術高等学校の海洋技術コースの学生達の見学を受け入れたり、船の進水式には地元の小学校や幼稚園の子ども達を招いたりされてます。会社を知ってもらうための取り組みはいろいろされているので、「船を造りたい」と、興味をもってくれる子もいると思います。

和喜さん:そう願っているんですが人材確保、人材育成は急務です。技術の取得にはどうしても時間が必要で、熟練工が歳をとって退職するスピードと、若い子が技術を習得する時間とが同じというわけではないですから。そのギャップをどう埋めるか、技術の伝承は課題ですね。

——日下さんは年齢的に“若手”に入ると思いますが、日下さんが感じるこの仕事の魅力とはどういうところでしょうか?

日下さん:業種的に楽な仕事ではないですが、カタチになるものを造るということは、やりがいがあります。

——確かに!あんな大きな船を造ると考えただけでも、夢がありますね。

日下さん:その手応えが伝わっていけば、この仕事をしたいという人も増えると思います。ハイドロカットも含め、便利な道具もいろいろ出てきて、人間の負担も徐々に減ってきているので、興味を持った人はチャレンジしてみて欲しいと思います。

——ありがとうございました。